弊社が展示設計・制作・施工を担った「隠岐自然館」(島根県隠岐の島町)が2021年4月1日にオープンしました。
隠岐諸島のビジターセンターにあたる「隠岐自然館」では、隠岐ユネスコ世界ジオパークを特徴づける「大地の成り立ち」「独自の生態系」「人の営み」の3つの視点から、隠岐諸島の魅力を楽しく学べる展示が展開されています。
本記事では弊社が制作した隠岐自然館の展示を、そのポイントと共に紹介いたします。
日本海沖に浮かぶ隠岐諸島は、本土からフェリーで約2時間30分。その玄関口にあたる西郷港に新築された「隠岐ジオゲートウェイ」の2階に、「隠岐自然館」があります。
同じく西郷港前の隠岐ポートプラザ2階にあった旧・隠岐自然館を移転し、大幅にリニューアルしたものです。
隠岐ジオゲートウェイ1階でまず出迎えてくれるのが、隠岐諸島の鳥瞰図をモチーフにした、幅4m×高さ3mのターポリン製大型タペストリー。
電動バトン装置で上下移動が可能です。
隠岐4島が夕暮れの海に浮かぶ美しい情景を、迫力の巨大なサイズに仕上げました。
窓側には、隠岐諸島を構成する4町村をイメージした高さ5mのタペストリー。
それぞれが異なる魅力を持つ4町村を美しく大きな写真でアピールしつつ、メッシュ素材の生地で外光を柔らかに取り入れることができます。
また、生地にはターポリンを使っているため、耐久力にも優れています。
グラフィックを両面に印刷することで、建物の内側だけでなく、外側への訴求も図っています。
その足元のフロアグラフィックは、縦6m×横4.8mの巨大な床地図。
日本列島の地形がわかるよう、標高ごとに色付けした標高段彩図で表現しています。
奥の50インチのタッチパネル式のデジタルサイネージでは、国内外のジオパークを紹介するコンテンツを制作しました。
また、右手に見える、55インチディスプレイ4台を組み合わせたマルチモニターでは、隠岐ユネスコ世界ジオパークの迫力ある映像を上映しています。
2階に上がり、隠岐自然館の入口の手前には、隠岐の三大杉のひとつ、八百杉(やおすぎ)の枝の実物を展示。
その背後には、八百杉をモチーフに、島民のみなさまの写真をモザイクグラフィックで展示しています。
館内に足を踏み入れると、3.2m四方の巨大な立体模型に投影されたプロジェクションマッピングが目の前に現れます。
隠岐諸島の真っ白な模型に、色鮮やかな映像が映し出され臨場感あふれる映像体験ができます。
その奥に設置された、130インチ相当の4面ディスプレイでは、地球誕生から隠岐諸島の成り立ちまでのストーリーを紹介した7分ほどの映像を、椅子に座ってじっくりと楽しむことができます。
隠岐自然館の展示は、5つのゾーンに分かれています。
「大地の成り立ち」ゾーンでは、壁沿いの展示パネルで、隠岐の大地の成り立ちを解説しています。
システムレールを用い、パネルの差し替えや追加など、変更が簡易にできます。
岩石の実物も並べ、リアリティのある展示になりました。
「独自の生態系」ゾーンでは、隠岐の貴重な生き物の生態を表現したジオラマも制作。
オキサンショウウオやシイノキの模型は、実際の生息地・生育地へ現地調査に行き、生体の撮影や枝葉の型取りを経て、作成しました。
また、陸だけでなく海にも着目し、日本海に生きる海洋生物のアクリル封入模型やプラスティネーション標本を、海底を模した什器にディスプレイしました。
什器にはLEDライトを埋め込み、海洋生物を神秘的に浮き上がらせています。
「人の営み」ゾーンでは、江戸時代に日本海を行き交った北前船の模型を、旧・隠岐自然館から移転。隠岐4島の多種多様な民俗芸能を映像で楽しめるモニターも導入しました。
奥には、お子さんにも楽しんでいただける「キッズラボ」があります。
壁面全体をホワイトボード仕様にし、自由に描いて遊ぶことができます。また、マグネットをいくつも用意しており、隠岐の歴史や、4島の位置など、隠岐のことを遊びながら楽しく学ぶことができます。
観光客の方々だけでなく、島の子どもたちも楽しめる空間づくりを意識しデザインを行いました。
360度カメラ「Matterport」にて撮影した、実際の施設の様子はこちらでご覧になれます。
弊社では、これまでも地図コンテンツを中心に展示制作に携わってまいりましたが、今回はグループ会社である 株式会社ジオ・ラボ をはじめ多くの事業者と連携しながら、展示空間全体の設計、デザイン、施工を行いました。
隠岐諸島には、大陸の一部だった時代や火山島の時代など、何億年も前から現代に至るまで、様々な姿に変化してきた歴史があります。北と南の植物が同じ場所に生育している不思議な生態系や、黒曜石にはじまる約3万年の歴史など、隠岐ユネスコ世界ジオパークの魅力を余すことなく伝えることができるよう、ターゲット来館者に向けてどういう空間にしていくか、施主様と密接にコミュニケーションを取りながら設計・デザインを行いました。
北海道地図株式会社では、ビジターセンターや展示施設の新設・改修を行っています。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。
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